菅政権:孤立化・一人ひとりを包摂する社会は大事なテーマだ

さて、菅政権がスタートしました。新政権でまず注目されるのが所信表明演説です。

就任演説では「最小不幸社会」の構築を訴えていました。そしてこう続けました。

もちろん大きな幸福を求めることは重要でありますが、それは例えば恋愛とか、あるいは自分の好きな絵を描くとか、そういうところにはあんまり政治が関与すべきではなくて、逆に貧困、あるいは戦争、そういったことをなくすることにこそ、政治が深く力を尽くすべきだとこのように考えているからであります。

毎日新聞: 菅首相会見:「政治の役割は最小不幸の社会を作ること」

なんだか、最小不幸社会というキーワードは評判が芳しくないようですが、貧困や戦争といった不幸を最小化することが、政治の使命であるという考えに僕は賛成です。この一文は、

われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

日本国憲法

という日本国憲法の理念にも通じると思います。不幸の例として「貧困」と「戦争」を菅首相は挙げました。このうち、貧困は日本にもある問題です。所得は伸び悩み、不安定な労働が拡大する中で、貧困に陥る可能性が誰にでもあると言えでしょう。僕は今就職活動中ですが、仮に失敗すると、将来貧困に陥る可能性が高まると認識しています。

一方で、戦争というのは日本にとって差し迫った問題ではありません(朝鮮半島の様にに火種はありますが)。中東やアフリカ、中央アジアといった現在も戦争や紛争が続いている地域、あるいは核軍縮などに強力にコミットすることも考えているのかな。とも僕は受け取りました。しかし、所信表明演説ではあまり触れられていません。日本には欧米にあるようなキリスト教という足かせがありません。こうした特性をもっと活かした外交を行うべきだと、僕は思います。「戦争」や「紛争」に対する菅政権のアプローチが気になるところです。

最小不幸社会というキーワードがなぜか所信表明演説には見当たりません。しかし、貧困への取り組みとしては『「一人ひとりを包摂する社会」の実現』という理念が出てきました。ここでは「孤立化」が社会リスクであると規定した上で、

ネットカフェに寝泊まりする若者や、地域との関係が断ち切られた一人暮らしの高齢者など、老若男女を問わず、「孤立化」する人々が急増しています。従来のしがらみからの解放は、強者にとっては自由を拡大するものかも知れませんが、弱い立場の人にとっては、孤独死で大切な人生を終えてしまうおそれがあるのです。

強い財政・社会保障…所信表明全文<4>

など、かなり詳しく孤立化の何が問題かを語っています。そして、こうした孤立化を防ぐ「一人ひとりを包摂する社会」のを構築する手法として、湯浅誠さんたちが提唱しているパーソナル・サポートを取り上げ、「深く共感する」と述べました。

「実施する」や「取り入れる」ではなく「共感する」に留めたと点に、僕は逃げ腰な印象も持ちます。「専門家であるパーソナル・サポーターが随時相談に応じ、制度や仕組みの「縦割り」を超え、必要な支援を個別的・継続的に提供する」というのが湯浅さんたちの政策の様ですが、これはかなりの財源が必要そうです。そのため、取り入れようにも目処が立たないのではないでしょうか。

昨年、NHKスペシャル「無縁社会」が大きな反響を呼んだことからもわかるように、孤立化、無縁化を社会リスクと捉えて政治が対処すべきだという考えには多くの有権者が賛同するところではないでしょうか。僕は「税制の抜本的見直し」を早く済ませ、パーソナルサポートの様なシステムにこそ税金を大胆に投入すべきだと思います。

一つ、気になったことがあります。この「孤立化が社会リスクだ」という表明はかなり重要だと思われます。問題の意味を詳しく説明し、具体的な政策の一例まで挙げています。それにも関わらず、ニュース番組、ニュースバラエティ番組の「所信表明演説をご覧ください」的なVTRを3,4つの番組で見たのですが、『「一人ひとりを包摂する社会」の実現』を切り取ったものは、僕が見た中では一つもありませんでした。普天間や政治と金といった、現時点でホットな問題に対する菅政権の姿勢を見たいのはわかりますが、菅さんのせっかくの問題提起が大衆に伝わらなかったことになります。メディアの切り取り方に大いに疑問を感じた所信表明演説でもありました。

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